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「ボクたちもブランコ、乗りに行ってみようよ」
相変わらずうんともイヤとも言ってくれない彼女は、四角い箱のような形を作っていた。
「頑固だなぁ」
「……るよ」
「え?」
暑さを乗せた風がボクと彼女の間を通り抜け、小さな声はうまく聞き取れない。
「切れちゃうよ」
「きれる?」
一生懸命砂を掘っていた彼女の白い指がブランコを指した。
その瞬間、いつもよりサビの音が静かになって、代わりにブゥンと風が切れる音がして、近くにいたお兄さん達の叫び声が響く。
まるで飛行機が飛んでいくように、ボクと彼女へ暗い影を落としながら飛んでいくブランコ。
金属が重なり合う音と鈍い音が同時に響き、叫び声が悲鳴になって、また別のお年寄りたちが集まり始めた。
「救急車!」
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