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あんまりにもしつこいから、思わず声を上げてしまって少しばかり後悔していたけれど、彼女も男も全然気にした風もなくて、ただ彼女が突然指さしたから、そのことに視線も耳も動いてしまったようだ。
「何かあるのかい?」
「あの藤棚の向こう側。草むらの中」
「なんだい?」
けれど彼女はそれきりまた話さなくなってしまって、だけど大人たちを遠ざけるには十分だったようで、彼らは藤棚の奥へと消えていった。
でも何故だろう。
うるさい大人がいなくなってせいせいしているはずなのに、妙な嬉しさと緊張でドキドキしてしまって、砂を掘る彼女を見れなくなってしまった。
「あの……他の遊びはしないの?」
勇気を振り絞って話し掛けたのに、やはり彼女は視線を向けるだけ。
なんだよなんだよ、そんなにボクのことが気に入らないの?
彼女の態度にだんだんイライラしてきてしまって、その気持ちが周囲の風をどんどん引き寄せる。
それでも彼女はうんともすんとも言わなくて、だけど不意に顔を上げてくれたと思えば、初めて笑顔を見せてくれた。
「良かったね、やっと見つかった。遊んで貰えるよ」
「本当!?」
「なっ何だこれはァ!!」
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