第一章

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「じゃあ、講堂で君のお披露目はやるから。あと二時間後に講堂に来てね。生徒の授業が終わる頃だろうから。」 お披露目て、披露できるようなものは一つもないのに。 「わかりました。理事長。」 「じゃあ、はい。これ。君が一年間使う部屋の鍵だよ。自警団の方には申し訳ないんだけど、生憎部屋の空きが無くてね、同室の子がいるんだけど、大丈夫かな?」 そう言って鍵を渡され、受け取るとそれはなんだか重く感じた。 「あー、問題ないです。寧ろ、起こしてくれる奴がいる方が…。」 「ふふ、君は朝が弱いのかな?代わりと言ってはなんだけど、同室の生徒は教師の評判も比較的良い子だから、安心しなさい。」 「わかりました。では、理事長、これからよろしくお願い致します。」 理事長の言葉に少し安心し、俺は最後に丁寧に一礼をした。 「じゃあシキ君。楽しい学園生活を。」 そこで俺はトーカを一瞥して部屋を出た。 *** 理事長室から出て、一息つく。 やはり、団長の前は無意識のうちに筋肉が強張ってしまう。どうにかならないものか。別に怖いわけではないのだが。 ふと、渡された鍵を見る。カードキーのようだ。金かかってんな。 そこで俺は気づいてしまった。今現在自分が着ている物は隊服である。 これでは、自分の身分を言いふらしているようなものだ。これで、自室とやらに行ったら同室の奴にはわかってしまう。しかし、理事長が言っていたように授業中である。当然校舎は静まり返っているし、同室者もいないだろう。 …万が一の時は、正直に言おう。なんて、団長にバレたら、本当に犯されかねないことを考え、寮に足を運ぶ。
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