第一章

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カードキーを通し、部屋に入る。 共同部屋のようなスペースの両脇に2つの扉。 なるほど、寝室は別なのか。 玄関から右手すぐに風呂とトイレ。共同スペースは、割と広く、キッチンや冷蔵庫、テレビまでついている。 これは同室者の私物か定かではないが、もともと備え付けの物であれば、ここは旅館かホテルか何かである。 共同スペースから察するに、同室者はあまり部屋を荒らす質の人間ではないらしい。洗濯物は畳まれているし、シンクに皿は溜まっていない。もしかしたら、料理をしないだけかもしれない。冷蔵庫を開けるとどうやら料理を頻繁にするようだった。 少しばかりホッとしたところで、自室を確認することにした。まあ二択だし直感で。と片方の扉を開ける。 あ、俺の荷物あったわ。当たり。 武器を適当に壁に立てかけて、片付けに取り掛かる。もともと、荷物が少なかったため、本を備え付けの本棚に並べる。隊服と少ない私服はクローゼットにしまう。 クローゼットに制服が入っていることに気づき、制服のことに一切気が回ってなかったな、と苦笑いをする。無かったらどうしてたんだ。 本当にここで一年生活するのか。 かなり急な話であいつらに何も言わずに出てきてしまったし、なにより俺は自警団の寮以外で生活したことがなかった。 もっと言ってしまえば、軍関係以外で人と関係を持つこともなかった。 少しばかり不安が残るが、これは任務である。必ず遂行しなければならない、俺は隊長俺は隊長と自分に暗示をかける。 なによりあの、俺に会いたいと言った第三師団団長、セツカ・オウシュウの考えも全く見当がつかないので、そこもハッキリさせたいところではあるが、お目付役というくらいなら、すぐにわかるはず。 そういえば、特徴とかクラスとか聞かなかったな… ーーー練習試合まであと、二時間。 そっと、立て掛けた刀を撫でる。 練習試合とは言え、人間にこの刀を向けるのだ。身体に微かな緊張が走る。 観衆の前で行う練習試合なんて嫌だが、トーカには負けるな、と言われている。怖いなあ、嫌だなあ。 ーーー俺は、なんのために武器を握るのか。人間に刀を向けるのか。それは答えがとうにでている。 生きる為だ。 では、なんのために、俺は、生きるのか。 これは俺が幾度となく考えていることだが、未だに答えは出ていない。 ーーーーーこの世界に神様がいるのなら、神様は何故、教えてくれないのか。そうすれば、こんなに悩まなくて済むのに。 なんてね、
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