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気持ちが悪い。不満だ。 このような気持ちに気づいたのは、つい最近のことだ。 あぁ、嫌な気持ちだなあ。 妻も、手を洗え手を洗えとうるさい。 そんなに不潔なのか俺は。 ことあるごとに手を洗っているのに。 うるさい、うるさい 会社では、いつも煙たがられている。 なぜか、俺が近寄ると、嫌そうな顔をする。 俺が何かしたのか? 成績だって悪くないし、 誰よりも先に資料を仕上げている。 後輩が困っていたら、 しっかりサポートしていきたいのに、近寄りづらい。 昨日の夜、学生時代の同期から遊ばないかと連絡があった。 カラオケに行くらしい。 女性も来るらしい。 妻には愛想をつかされているから、 あわよくば黄色い声が聴けたらいいな。 なぜか一人の子に嫌われてしまった。 友人からはもうお前には会いたくないと言われた。 俺はただ、みんなに居心地がいいと思ってほしかっただけなのに。 家に帰ろうと思っていたら、 駅の近くで旧友に会った。 あいつは俺のことをばい菌扱いしてきたやつだ。 他の人と同じようにスキンシップをしようとしたら、 突き飛ばされた。 もう時間も経ったし、彼も大人になったことだろう。 せっかくだし、そこらへんで一緒に飲もうということになった。 今日は、嫁にも会いたくないし、ちょうどいい。 飲んでいたら、すっかり気分もよくなった。 友達にはたまには会うもんだな。 おなかもいっぱいになったし、 彼はほとんど食べていなかったから、お通しの枝豆はあげよう。 あれ、肩にホコリがついてる。 「やめろ!!さわんじゃねえよ!!!!」 彼の怒号が、店に響き渡った。 僕は、訳が分からなくなった。 どうして なんで いつも僕ばかりこんな目に遭う。 僕は、そのあとの彼の言葉なんて耳に入ってこなかった。 静かに、お金だけを置いて、店を出た。 気づいたら、家の前にいて、 立ち尽くしていたら、嫁のお母様に声をかけられた。 僕の手料理を食べたいと、来てくれたようだった。 ごめんなさい。 僕にはあなたの娘さんを幸せにすることはできません。 彼女の笑顔が大好きでした。 でも、もう僕には彼女を笑顔にすることはできません。 無責任かもしれませんが、ほかのだれかに彼女を幸せにしてほしいです。 僕のような人間は、もう誰も相手なんてしてくれませんから。 「そんなことないわ、あなたはとても頑張っているわ」 僕の何を知ってるというんだ。 尊敬は、軽蔑に変わった。 世の中の人間は、僕の心なんて知ったこっちゃないんだ。 僕はなんてかわいそうな人間なんだ。 誰からも見放されて、これからは一人で生きていくんだ。 彼女のお母様が何かを言っていた気がするが、もう聞こえない。 さようならとだけ告げて、僕は 気づいたら知らない女と寝ていた。 なんだか、口が寂しい。 あ、そうか、俺は今まで爪を噛んでいたんだ。 でも、不思議と不快な気持ちもしない。 ここがどこかも知らないけれど、 君が誰かも知らないけれど、 僕は君と生きていくんだろうなと、決めた。
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