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雑歌
中学の時の先生から、小説書くなら短歌もやりな、とアドバイスされて始めたもの。平仄だとか使う言葉の妥当性だとかを考えて文章を書くようになれるらしい。
【 葦の瀬を 量る夜毎の 神楽橋 波音冷えて 蛙去りけり 】
歌意 : 橋を渡る度、秋が深まると共に高く伸びてきた葦に目がいく。 少し寒くなったので蛙もいないようだ。
【 積みそだつ 畷の影は 稲干しの 重なり連れる 秋の夕暮 】
歌意 : 次々と刈りまとめられていく稲の束が、秋の夕陽で影を作っていることだ。 そして、とにかく『畷』という言葉を使いたくてたまらなかった。背伸び。
【 差す傘を 揺らす秋風 夜にしみて 雨の随に 日を跨ぎつる 】
歌意 : 秋雨の降る夜中、コンビニ行って帰って来たら日付が変わっていたことだ。
【 初雪は 友なる冬が 呼び告ぐる 秋の末にや 届く先触れ 】
歌意 : 晩秋に雪が降って、もうすぐ好きな冬が近いと気付かされることだ。
【 沢渡りの 雪風照らす かがり火は 除夜尋ね来る 影伸ばすらん 】
歌意 : 川を越えて吹き付けてくる雪を照らす神社のかがり火で、二年詣での人たちに影ができている。
【 黒染みに 濡れる膝折り 笑み起きて 雪衣飾る 古里の土 】
歌意 : 帰省して駅から出て早々に転んで膝を汚してしまったが、嬉しくもある。 これは久しく触れることのできずにいた、故郷の土なのだから。 だがタクシー乗り場のラウンドアバウト周辺は不規則な段差をなくしてもっと広範囲に舗装するべき。
【 掌は 房髪添えて 訪雪に 唇隠す 朝の待ち人 】
歌意 : あなたは優しい。 手袋に乗った雪が、見守る自分の息で解けぬようにと三つ編みの髪で口元を隠すほどに。
【 冬衣 着省く肩に 梅の香の 花降り載せよ 高松の辻 】
歌意 : まだ肌寒くはあるが、厚着をやめてみる。 やっぱ寒い。
せめて肩に梅の花びらでも乗せてみようか。 その分、少しでも暖かくなるだろう。 いや無理であろう。
【 家路踏み かざす手燭に 罪ありて 驚き浮かぶ 河岸の夜桜 】
歌意 : 川沿いの夜道を進むうちに、自転車のライトが桜を強く照らし出してしまった。 花も夜は眠っているだろうに、光でびっくりさせて済まないことだ。
【 芝川の 水音囃す 夏雲は 月影連れて 世にかかるなり 】
歌意 : 雨が川の水位を上げている。 雲が月を隠すように空に広がっている。
平仄優先の一首。 それだけ。 描きたい光景は確かに在ったのだが、歌の形に拘われるうちに言葉に削られ消えてしまった。
【 緑増す 田を打つ雨の はげしさも 霞に透ける 庵のともし火 】
歌意 : 初夏の豪雨。 辛うじてマンションの門灯が見えている。
【 叢の 虫の音冷す 風の夜の 帳は秋の 節目なりけり 】
歌意 : 明らかである。やや疲れてきた。
【 夏月も 響む花火に 蛍火の 飛び跡もとめ 君は振り向く 】
歌意 : 空に広がる花火ではなく、すぐそばを飛び行く蛍の光にあなたの心は奪われている。『響む』の使い方ってこれで合ってるのかな。
【 白波と 遊ぶ千鳥を 待つ葦に 吹き筋残せ 志摩の雪風 】
歌意 : 明らかである。
【 湯に沈む 酒の香満ちて 笑む人と 炬燵を護り 暮れるふるさと 】
歌意 : 明らかである。このフレーズ便利。
【 早咲きの 桜を揺らす 風見れば 花雪連れて 淵端染めなむ 】
歌意 : 暖かくなる前にほころびてしまった桜の花びらが風に散って、雪と一緒に水面に浮かんでいる。
【 崩れ舎の 道端の塵も 春雪は 往く人絶えて ただ積もるなり 】
歌意 : 破壊された建物の瓦礫が散らばる道路に薄く春の雪が積もっている。歩く人もいないので、弱い降り方でも積もりゆくばかりだ。
ウクライナ戦争のニュースを見て。
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