秋風に吹かれて

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十月は私にとって哀しい思い出の月だ。 もうすぐ、花蓮さんと航太くんの命日だから。 この日だけは忘れられない。 決して、忘れてはいけない日。 あれからもう五年も経つんだ。 当時の状況を思い出し、すこし涙ぐんでいるうちにアパートに着いた。 「彩矢ちゃん、大丈夫?」 痛々しく私を見つめた遼くんには、かなり誤解をさせてしまったみたい。 アパートの階段を力なくのぼる足音が、カンカンと寂しく響いた。 クスッと笑って後ろをついて行った。
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