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そもそも、どうしてこんなことになったのかと言えば……全ての元凶は、どう考えても俺を追い返しやがった出版社だと断言できる。
俺はフリーのカメラマンで、基本的にはオカルト系を中心に撮りながら、そういう系統の雑誌の出版社に写真を売っていた。
幽霊や宇宙人。超常現象や超能力と……まぁあまり信憑性のないものばかりを撮ってきたが、それでも俺の写真は今までずっと使われてきて、雑誌の利益にも役立っていたはずだった。
それなのに……ここんところいいネタが撮れなくなってきたと分かった瞬間。俺は要らないと、追い返しやがった。
俺はフリーのカメラマンだ。要らないというなら、別の出版社の方へ行けばいいだけの話。
別に痛くもかゆくもないこと。だったはずなのに。その時の俺は、怒りで冷静さを失ってしまい……。
「だったら今までで一番いい写真撮って、俺を捨てたこと後悔させてやる!!」
と、自棄になって。宇宙人が出たと噂されていた森の中へと入ってしまい。宇宙人よりもヤバイバケモノに会ってしまったというわけである。
幸いにも命は助かったが。あの日以来、何故か俺はバケモノに懐かれてしまい。未だにこの森から出られずにいる。
「なぁ……そろそろ家に帰りたいんだけど」
「カエル?ココ」
「いや、俺の家はここじゃねぇんだって」
日本語が分かっているのか。それともただ俺の言葉を繰り返しているだけのか分からないが。俺が森から出ようとすると、バケモノも着いてこようとする。
流石にこんなバケモノを連れて街中を歩くわけにはいかない為。結局また森へと引き返すというループを繰り返しているのだ。
「はぁ。お腹減った」
でもいつかは脱出しないと、このままじゃ殺されなくても餓死してしまう。
「さて。どうするか……」
もしもバケモノから逃げきれなかったら、その時は今度こそ殺されるかもしれないし。慎重に動きたいところだが、そんな悠長に考えている暇も……。
「ゴハン」
「え?」
「タベル?」
バケモノの言葉に理解が追い付かないでいる俺の前に差し出されたのは、火でしっかりと焼かれていた少し小ぶりの魚だった。
「えっと……い、いいのか?」
「タベル?」
「う、うん。食べる」
俺の返事に、バケモノはどこか嬉しそうに目を輝かせている。
もしかして俺って、コイツにとってペットみたいな存在なのだろうか?
内臓とかは取られてなかったけど、魚も普通に美味かったし。水もくれた。肌寒くて身体を擦っていたら、ボロボロになった布切れを俺に被せてくれた。
「あ、有難う」
「アリ?」
「いや、アリじゃなくて……いや。なんでもない」
こんな風に誰かに優しくされたのって、いつぶりだろう。
なんだか心がポカポカする。満たされている感じがする。
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