バケモノは、レンズの向こうに

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「……ガウス?」 その日。 いつも俺の隣で寝ているはずのガウスの姿がなかった。 「おーーい!ガウスーー?」 心当たりのある場所全て見回っても、ガウスの姿はない。 それどころか、いつも感じるアイツの独特な気配もない。 「まさか……森を出た。なんて言わないよな?」 胸騒ぎがする。 でも、アイツが森を出る理由なんてないはずだ。俺もこの森にいるわけだし……。 「でももし……この森から出たら、ガウスは……」 俺は手元にあったスマホとカメラだけを持って、数か月ぶりにこの森を出た。 変わらない道。変わらない風景。 まるで、ずっと見ていた夢から覚めたような感覚だった。 「おや?どうしたんだいアンタ?迷ったのかい?」 キョロキョロと辺りを見渡していたからか。俺が道に迷っていると勘違いして、一人のお婆ちゃんが声をかけてきた。 「あ、いえ。大丈夫です。有難うございます」 「そうかい」 何の変哲もない普通の会話。俺と同じ普通の人。 忘れていた現実が、次第に俺の心をジワジワと蝕んでいく。 「……早く。ガウスに会いたい」 俺は、ひたすら走った。 ガウスに会えば、きっとまた色んな姿を見せてくれる。綺麗な景色を見せてくれる。 ガウスと一緒に居た日々は非日常だったけれど、それでも俺が今までレンズの向こうで見ていた現実よりマシだった。 お願いだガウス。 お前と撮りたい写真は、もっと沢山あるんだ。だからーーーー。
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