本当に欲しかった言葉

1/1
前へ
/53ページ
次へ

本当に欲しかった言葉

毎日何度も顔を見にくる人がいて 段々とエスカレートして まちぶせをされるようになった こういうことを人に相談するのが昔から嫌でずっと我慢していたけど 辛くなって先生に事情を全部話した そしたら 『怯えながら仕事するのは辛いよね』 とか言うから ずっと言えなかった言葉が 次から次へと出てしまった 『本当は怖かった 今でもあの目が忘れられない』 助けてなんて 怖いなんて 言いたくなかった だってそんなこと周りに言ったって どうにかするのは結局自分だ だから無意味だと思ってた 自分がかわいそうなんだって言ってるだけになる 『心配だよ』『許せない』って言ってくれても それで私の心が楽になることなんてない 強くなれるわけじゃない だけど先生は違った 『しばらく仕事休みな。そんな精神状態じゃ仕事なんてできないよ。』 大丈夫っていう私に 『そう』 『でも俺にはそんなふうに見えないけどね』 『大丈夫っていったら、周りには大丈夫だとみられてしまうよ』 『そんなことで無理をする必要はない。怖いならそう言わなきゃだめだよ』 そう言ってくれた 先生はちゃんと状況と心情を的確に把握した上で 明確な意見をくれた 本当に欲しかった言葉をくれた 逃げ道ができたことで どれだけ私の恐怖心は和らいだだろう 気持ちを持ち直すことができただろう 一緒にいれなくても 私の気持ちを救ってくれた 頼ってもいいことを教えてくれた 特別な人だった
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加