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そんなわけで、一日の大半を玉の外で過ごしている玉郎だったが、ただひとつ、通勤途中のバスだけは玉の中に戻ることを余儀なくされていた。
帝太郎曰く、「交通費削減」のためらしい。
「玉ちゃんが外に出てたらバス料金二人分取られちゃうんだもん」
時折「たまにゃあ俺も普通にバスに乗ってみてぇ」とごねてみるのだが、いつもそんな風に却下されてしまう。
それで、玉郎は毎朝玉の中で出勤し、託児所内で外界へ出るのが日課になっている。
玉郎が靄のようになって玉を出入りする様子は、彼が異形である何よりの証。玉封じの鬼と呼ばれるゆえんだ。
腰まで伸びた煌らかな銀髪の間から、時折覗く二本の角も、純粋な心を持った子供と、霊能力に長けた大人にしか見えない。そんな人間滅多にいないので、玉郎は自分の風体を気にすることなく堂々と外界を満喫している。
しかし、幸か不幸か菜奈子には彼のこの角が見えてしまった。
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