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僕が悪い。
僕はこの村に来るべきではなかった。
仮面だらけの外の世界でバケモノと蔑まれても、投げられた石で仮面がボロボロになっても、それを捨てて逃げてはいけなかったんだ。
ごめんなさい。
あんなに優しくしてくれたのに
ごめんなさい。
ごめんなさい。
「おい若造」
後ろからしゃがれた声が聞こえた。
振り返ると、町のはずれに住んでいるおじいちゃんが息も絶え絶えといった様相で立っていた。きっと逃げてきたのだろう。服はボロボロで、顔には何かに掴まれたであろう痣が出来ていた。
そんな様相のおじいちゃんが僕に問いかける。
「お前は狙われないんだな」
おじいちゃんの声は以前まであった覇気が感じられず、縋る様な弱々しさを孕んでいた。
「うん」
「そうか。なら頼みがある」
「頼み?」
「あぁ」
そう言っておじいちゃんは僕に細長い筒状のモノとずしっとした重みのある巾着袋を手渡した。
「俺たちのためにバケモノに成ってくれ」
おじいちゃんの言葉の意味を理解した僕は、それを持って静かに立ち上がり、人間をスコープ越しに見つめた。
笑顔を張り付けて、人に笑顔を押し付ける。
そんな『人間』に照準を合わせ、躊躇うことなく僕は引き金を引いた。
親友が自殺したあの日、僕は仮面を取ってひたすら泣き喚いた。
その姿を見て、仮面の下に埋もれた口で人々は僕をバケモノと呼んだ
常に自分を偽って平和な社会を演じるのが、
それから逸脱する者を許せないのが、
仮面の下でグジュグジュに腐った顔を隠して生きる者が『人間』ならば。
その人間の返り血を浴びて、そんな人間が仮面の下の素顔を晒し、息絶えていく様を見て、笑いながら泣いている僕はきっと『バケモノ』なのだろう。
バケモノのままでいい。
赤く染まった全身を震わせて人間を屠る。
この村からいなくなるまで。
永遠に
永遠に。
後にこの村は、バケモノたちの住む村としてその周辺一帯が禁足地となり、二度と誰も近づくことはなかった。
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