ONE

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 真夏だというのに黒いシルクハットに黒いタキシードに黒いエナメルシューズ、おまけに黒いマントを身に着けた謎の男がアメリカで一番暑いアリゾナ州はフェニックスの地に何故か汗一つ掻かずに颯爽と降り立った。  飛行機から?否、空港じゃない。じゃあヘリコプター?否、違う。じゃあ気球?否、違う。じゃあ、パラシュート?否、違う。じゃあ、グライダー?ハンドグライダー?パラグライダー?否、違う。じゃあ、何だよ、UFOかよ?まさか、では何から?神出鬼没だからそれも謎、正に謎の男。  更に謎な事に謎の男はスラム街に出向くと、人種差別に苦しむ黒人たちの前で黒い丸薬を一粒掲げてこう言った。 「これを三つ飲めば人種差別に遭わなくなるぞ!」  すると、多くの黒人は笑い飛ばし、ファッキンボーイ!クレイジーボーイ!中にはsillyやstupidという言葉を使って馬鹿にする声が上がる中、サムという黒人が叫んだ 「そんな薬があるものか!」 「ではこの黒ネズミに」と言って謎の男はもう片方の手で持っていた黒ネズミに一粒黒い丸薬を飲ませると、虫篭に黑ネズミを閉じ込めて言った。 「これを持ち帰ってみなさい。さすれば翌朝、人種差別に遭わなくなる理由が分かるであろう!」  差し出された虫篭をサムが不審げに進み出て受け取った。
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