青年の秘密兵器

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

青年の秘密兵器

その青年は常日頃から自宅で執筆活動や書類の整理やいわゆるホームワークが異常に忙しい青年だった。 高校を卒業し大学へは進学せず、自宅での仕事を選んだ。 で、その時ふと思いついたアイデアの小説を賞に応募したら受かってしまい、今は売れっ子缶詰状態小説家になっていた。 家でただただひたすら小説を書く日々、今日で四日目。 流石に限界を迎えようとしていた。 声は出さない、というより対人がほぼ無い、編集者の担当さんとはメールだけが多いので、人とほぼ話さない状態になっていた。 そうして迎えた我慢し続けた五日目。 青年は「うがああああ!限界だ!」と叫び、直ぐにパソコンをスリープにして、部屋の押し入れから彼の『秘密兵器』を取り出した。 そう!PS4!プレイステーション4! 青年はマイクをPS4に接続しSHUREのヘッドフォンを装着し起動した。 そうして、数あるアプリの中でJOYSOUNDを選んだ。 青年はとにかく声を出したかった。だから、JOYSOUNDの画面が出たとき五日ぶりの満面な笑顔になり、歌った。 アニソンは当たり前、VOCALOIDも当たり前、J-POPも当たり前、洋楽も当たり前、PS4のJOYSOUNDで計4時間歌った。 その時、青年は涙が出た。声を出すって最高に気持ちよくて最高に生きてる感覚を得られること。 青年はその日は、満足のまま眠り、朝起きると頭の中のグチャグチャな考えが吹っ飛び、最高のコンディションで小説を書けた。 人間、声を出さないと発狂をする。だから人間は定期的に声を出さないといけないのだ。 青年は自覚があるからこその『秘密兵器』だったのだ。 また4~5日目に『秘密兵器』に頼るとは思うが、生きている感覚がつかめれば手段を選んでいる場合ではないのだ。 本当は人と話すほうが良いかもしれない。しかし、人と話すことは人の話も聞かなくてはいけない。 言葉のキャッチボールだ。 そうなるとストレスが溜まる。 だからこその青年の独りで発散する『秘密兵器』なのだ。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!