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シャランと錫杖をならし、笠を被った僧が、焚き火の明かりの中に現れました。
僧が笠をとると、思ったよりも随分若い男で驚きました。すっと通った鼻梁と切れ長の目が清廉な印象を与えます。
「不躾なお願いではありますが、ご一緒させていただいてよろしいでしょうか。
1人より2人の方が安全でしょう」
私は丁重に断りましたが、僧は少しの間だけでも休ませて欲しいと食い下がるものですから、私はどうなっても知りませんよと半ばやけくそで横になりました。
すると、案の定やって来ました。
バサバサと鳥の羽音がしましたが、鳥の姿は見えません。しかし、私の目の前の地面に鳥の足跡がペタペタと付いていくのです。
劈くような鳴き声がし、そちらを見れば男の生首が木の枝の上に乗っていました。
よく見ると人の顔の耳の部分に翼が生え、唇の代わりに嘴が備わり、顎の下から鳥の足が生え枝を掴んでいるのです。
それも、一羽だけではありません。女や老人の首も集まってくるのです。
そっと僧の方を見れば、目を閉じて木の幹に背中を預けています。
よく眠れるものだと半ば呆れ、半ば感心しながらも、私は鳥達の羽音にいちいちビクビクして過ごしました。
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