眠りにつく俺の話

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 薄暗かった窓の外が、暗くなってきた。  女の子の姿が窓ガラスに映っている。  俺を抱きしめている女の子の姿が。  俺。  人間ではなくなっていた。  真っ白な俺。  目が覚めたらこんな姿になっていたなんて。俺。どうすれば……。  俺は真っ白のふわふわのクマさんのぬいぐるみになっていた。それはあの子が欲しがっていたものと同じぬいぐるみだった。  そうか。  やはり俺は死んだんだな。  俺の事故現場にこのクマのぬいぐるみを持っている人がいた。女の子にプレゼントしようと持っていた。  ごめんよ。  俺、無意識だったんだ。  死にたくない。まだ死ぬわけにはいかない!  思った心が近くのぬいぐるみに宿ってしまったのだろう。  だってね、お嬢ちゃん。  おじさんにもお嬢ちゃんくらいの子どもが居るんだ。ここで死ぬわけにはいかない! そう思っちゃったんだろうね。  そうか。  自分の立場がわかったよ。  だから俺。  噛めない下くちびるを心の中で噛む。  吐けない息を出す。
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