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こんな人も居るんだな。
こんな風に安心出来る人、初めて出会った。
あの事件が原因で高校中退した僕を持て余して邪魔者扱いした両親にもこんな感情は抱けなかった。
自分には味方がいないと思って誰のことも信じられなかったけど……。
早瀬さんのことは信じられる気がする。
まだ知り合って三日しか経っていない人にそんなこと思うなんて変だよな。
「ん…葵、起きたのか?」
「早瀬さん、おはようございます」
「ん、おはよ」と、挨拶をして起き上がった早瀬さんだけどなんだか凄く眠そうだ。
「早瀬さん、台所お借りしてもいいですか?コーヒー淹れてきます」
「葵が淹れてくれるのか。ありがとな」
寝起きの少し髪の乱れた早瀬さんはいつもより少し幼く見えた。
何だろう。
胸が少しドキドキするのは。
僕はキッチンに行ってコーヒーを淹れて、有るもので簡単な朝食も作った。
寝室から出てきた早瀬さんは朝食が出来ているのを見ると喜んでくれた。
「ありがとな。まともに朝食食べるのなんて久しぶりだよ」
「簡単なもので悪いですけど……」
早瀬さんは僕と向かい合って座ると美味しそうに朝食を食べてくれた。
「美味いなこれ。葵は料理上手なんだな。いい嫁になりそうだ」
「男なんで嫁にはなれないと思いますけど」
僕がそう言うと早瀬さんはそれもそうかと笑った。早瀬さんはよく笑う人だ。
早瀬さんが笑うと僕まで笑ってしまう。
変だな……。
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