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目が覚めると、私は真っ先に両親の顔を見た。子供みたいにボロボロと涙を零して、震える両手で私を抱きしめた母と、その後ろで顔をくしゃくしゃに歪めた父。目線を扉の方に向ければ、互いを抱きしめて泣き合う友人たちがいた。
どうやら、本当に元の世界に帰ってきたみたいだった。入水自殺をしたところを誰かに見られてしまったらしく、こうして助かったらしい。
衝動的に死を選んでしまったのだが、今はこの命があることに心底感謝した。
両親に散々心配の声をかけられ、友人たちからは心配と励ましの言葉を貰った。まだ、私のことを見てくれる人はこんなにも居たのだ。それに気が付かなかった自分は、なんと情けなくて最低な人なのだろう。
私は、医者からの検査を受けている間、窓の外の青空をぼんやりと見つめた。煌々と世界を照らす太陽が、いつも以上に眩しかった。
この世界は息苦しい。
あの太陽に焦がされて簡単に溶けてしまいそうだし、気を抜けば孤独に飲まれて死に憑りつかれる。怖い物だってたくさんあるし、嫌なこともこれから先たくさんあるだろう。
その度に私は、あの蝋の世界を思い出すだろう。私の背中を押してくれたヤシロのことも。
きっと彼も、あの最後の瞬間だけは、どこかでこの世界でもう一度生きることを望んでいたはずなのだから。
――私、もう少しだけこの世界で生きてみるよ。
瞼の裏で笑う少年に向けて、私はそう呟いた。
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