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「ねえ母さん」
「ん?」と応じる母の視線はテレビに向いたままだ。
「田舎の祖母ちゃんって、まだ生きてるよね?なんかあったとか聞いてない?」
怪訝な表情を見せた母は、
「なによ、いきなり。おかしなこと言うわね」
そこで僕はここ数日変な夢を見ていることを話すと、
「気持ち悪いわねぇ」と言って母は眉根を寄せた。
「ねえ、そのお婆さんって本当にうちのお祖母ちゃんなの?」
「いや、イマイチ顔がちゃんと分かんないだよね」
「それならただの夢じゃないの?なにかあったって田舎からは連絡もないし。気にしすぎよ。」
母の言葉に僕は「でも、」と食い下がる。
「でもさ、虫の知らせみたいなのもあるじゃん。なんか気になるんだよね」
「う~ん。」と言って考え込んだ母は、
「それじゃ念のため、後で実家へ電話してみようかしら。考えてみれば、最近連絡も入れてなかったし、ちょうどいいわ」
母の言葉に僕は納得し、朝食を再開させる。母も僕の様子を見て、テレビへと視線を戻した。
教室に入り席に着くと友人の藤原が僕の席の前に陣取った。
「なあなあ田島。俺、昨夜の夢に××が出てきてさぁ」
彼は嬉しそうに夢に出て来たグラビアアイドルの話を語る。うらやましい話だ。僕のほうはといえば花畑に老婆だ。それがアイドルなら毎日見たってかまやしない。むしろ川を渡って抱き付いてやる。
などと考えていたら、藤原が僕の胸を手の甲で叩いた。
「おい、俺の話聞いてる?」
最初だけ。まあ人の夢の話ほどつまらないものはない。それでも愛想笑いをして「聞いているよ」と答えた。
「××が夢に出たんだろう?うらやましい。俺なんかお婆さんだぞ」
「なんだそれ」
どうやら藤原は老婆に興味を示したようだ。なんにでも食いつく奴。仕方なくここ数日見ている夢の話を聞かせると彼は神妙な顔で、
「それって、臨死体験ってやつに似てなくね?」
「だよな」
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