亡霊の街

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「うん。お婆さんに誘われて川を渡ったら、もしかしたら死んじゃうかもよ」 「お前もそう思うか」 「ちなみにそのお婆さんって、お前の祖母ちゃんなのか?」 「はっきりはわからないけど、似てるんだ」 「だったら夢の中の川が三途の川だよ。渡るとあの世に行っちゃうんだ。あの世から祖母ちゃんが呼んでるんだよ」 「いやなんで祖母ちゃんが僕を呼ぶんだよ。ってかそもそもうちの祖母ちゃんは一応生きてるっぽいんだけど」 「そうなの?」  拍子抜けしたような藤原は、それでも諦めずに考えてから、 「だったらそれはお前とは全然関係ないお婆さんだな。いや、人じゃなくて霊だよ。お前、どこかで変な霊に取り憑かれたんじゃないのか?その霊がお前をあの世へ引きずり込もうとしているんだよ。いいか、絶対その川を渡っちゃダメだぞ」 「なんだよ、霊って。気持ち悪いこと言うなよ」  元々心霊話が苦手な僕としては内心ビビっていたのだけれど、それを悟られまいと努めて笑顔を浮かべてその意見を否定した。それからなんとか心霊話から軌道を逸らせようと今朝テレビで見た占いの話へと話題転換を試みる。藤原はなんにでも興味を示し、あっさりとその話題に乗ってくれた。  下校時間、藤原は部活があるので僕一人で校門を出た。そこから五分ほど歩けばバス停がある。  バスを待っていると「田島君」と僕を呼ぶ声がした。振り返ると星野さんが立っていた。同じクラスだが、あまり話をしたことがない。確か今は僕の斜め後ろの席のはずだ。 「なに?」と訊ねると、彼女は少し恥ずかしげに口を開く。 「ちょっと話があるんだけど、いい?」  これはまさかの展開か?と僕の胸は高鳴るのだが、それを悟られまいと平静を装う。 「うん、いいよ。」 「田島君さ、今朝藤原君と夢の話をしていたでしょ?」  おっとこれも違った意味でまさかの展開だ。胸の高鳴りは急速に静まっていく。 「ああ、お婆さんの夢の話?」
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