何にもいらない

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  「わかった。絶対にしてはいけないことしてくるね」  絶対にしてはいけないことって何?  質問したかったけど彼がすぐに探しものを始めたのでそれ以上聞けなかった。  彼は必要のない事には全く興味を示さない人のようだ。俺はそこにいる意味がなくなり用具室を出た。  彼の言った、絶対にしてはいけないことって、犯罪?道徳的な事?意味が広すぎて難しい。  これは、体よく俺を追い払う為の無茶振りなんじゃないかな?    どんな事をするか、センスを試されてるのかな?    その日の夕食の時に、母ちゃんとシュカに絶対にしてはいけないことって何だと思うか聞いてみた。 「そりゃ、犯罪とか差別とかじゃない?なんちゃらハラスメントとかさー」  シュカはハンバーグを頬張りながら言った。やっぱりそう考えるよね。 「ミカあんた、何かするの?」  母ちゃんが俺の顔を覗く。  鋭いな、もう。 「何もしないよ!」 「ならいいけど。してはいけない事っていうか、子供が親より先に死ぬってのはしてはいけないことだね。病気とか、事故は本人のせいじゃないけどね。逆縁ていうんだけさ」  そういう事は考えなかった。自然の摂理に逆らう事もいけないんだ。       「平君、絶対にしてはいけないこと見つけたよ」  俺は平君に昼休みに声をかけた。 「ん?佐々木君?」 「ごめんね、今日は、女の子じゃないけど」 「女の子?この前のね」  平君は事もなげに言う。女装の俺に興味なかったかな? 「この後、学校さぼろうよ」  平君の表情が曇る。 「体調不良で帰るんだよ、で、絶対にしてはいけないことしようよ、俺と」  「なにそれ?」  混乱したのか、平君は、目を伏せた。 「普段、真面目にしてるからバレないよ!」 「わかったよ。今日は疲れてるからさぼろっかな」  彼は苦々しく笑った。  とても疲れているようだった。ただそれがさぼる理由だったと思う。    
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