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ボイスレコーダーの記録
「おい、あれは何だ? あの積乱雲から顔出しているのは? こっち見てるぞ!」
スピーカーから聴こえて来る声はあの機体の機長のものだ。その抑揚から大きな混乱に陥っている事が分かる。
「レーダーには反応はありません。あっ、こちらに向かって来ます!」
この声は副操縦士のものだ。
「何だあれは・・バケモノか!」
「マイク、衝突コースです!」
「くそっ! 緊急回避するぞ!」
『ブーン・ブーン』という警報音が鳴り、機長が操縦を手動に切り替えたことが分かる。
「右後方、付いて来てます。なんて大きさだ! 右翼を巨大な手で掴もうとしてます!」
『ガタン・ガタン』という音に続き、『ガンッ!!』という衝撃音が録音されている。
「右翼を捥ぎ取られました!」
その瞬間、コックピットにマスターワーニングの警報音が鳴り響く。
「第二エンジンごと持って行かれました! マイク、急激な右ロールに入っている!」
「分かっている。補助翼が全く効かないんだ!」
更に速度超過警報音が始まった
「メーデー! メーデー!。こちらPA二三便。バケモノに襲われ、右翼を喪失。操縦不能で降下中です・・。あっ?」
その副操縦士の声に続き、激しい風切り音が記録された。機体が空中分解した様だ。その三秒後、ボイスレコーダの記録は終了した。
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