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「早く、高度を下げるんだ!」
その顔は狂気に満ちている。何故・・? 私は理解できなかった・・。
「・・田所さん・・。どうしたんですか? それにご存知だと思いますが、ATCの指示無く高度の変更は出来ません」
その瞬間、彼が振り向いた私の左頬を殴った。パンと乾いた音がする。
「そんなことは関係ない! 早く降下するんだ!」
そう言いながら、彼は私の席の操縦桿を左手で掴もうとしている。ここに来て私が機長としてやるべきことは一つだ。私は左手を足元に伸ばし、収納ボックスのドアを開けるとそこからコックピット護身用のスタンガンを取り出して、彼の腹部に当てトリガーを絞った。
「あっ!」
彼はそう短く叫ぶと昏倒してコックピットの床に転がった。
私は田所の異常行動に未だ困惑しながら右席の水野を見た。彼も倒れた田所を見ながら目を見開いている。
「何だったんですか? 今の?」
水野の声に私も首を横に振るだけだった。
「あとで、カンパニー無線で報告しておきましょう」
「はい、機長」そう言う水野に頷きなら私は床に転がった田所を見つめた。
(彼はどうしたんだろう?)
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