ボイスレコーダーの記録

1/1
79人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

ボイスレコーダーの記録

「おい、あれは何だ? あの積乱雲から顔出しているのは? こっち見てるぞ!」 スピーカーから聴こえて来る声はあの機体の機長のものだ。その抑揚から大きな混乱に陥っている事が分かる。 「レーダーには反応はありません。あっ、こちらに向かって来ます!」 この声は副操縦士のものだ。 「何だあれは・・バケモノ(モンスター)か!」 「マイク、衝突コースです!」 「くそっ! 緊急回避するぞ!」 『ブーン・ブーン』という警報音が鳴り、機長が操縦を手動に切り替えたことが分かる。 「右後方、付いて来てます。なんて大きさだ! 右翼を巨大な手で掴もうとしてます!」 『ガタン・ガタン』という音に続き、『ガンッ!!』という衝撃音が録音されている。 「右翼を捥ぎ取られました!」 その瞬間、コックピットにマスターワーニングの警報音が鳴り響く。 「第二エンジンごと持って行かれました! マイク、急激な右ロールに入っている!」 「分かっている。補助翼(エルロン)が全く効かないんだ!」 更に速度超過警報音が始まった 「メーデー! メーデー!。こちらPA二三便。バケモノ(モンスター)に襲われ、右翼を喪失。操縦不能で降下中です・・。あっ?」 その副操縦士の声に続き、激しい風切り音が記録された。機体が空中分解した様だ。その三秒後、ボイスレコーダの記録は終了した。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!