はじめてのプレゼント

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 目が覚めたら、辺り一面が真っ白だった。そして遠くの方から声が聞こえてきた。 「しろ子にしようよ」 「しろ子かぁ。悪くないなぁ」  それはイヤ!私は目を閉じて無理やり眠りについた。  再び目が覚めたら、辺り一面が真っ赤だった。また声が聞こえてきた。 「あか子にしようか」 「あか子かぁ。悪くないなぁ」  何よ、あか子って!私は改めて目を閉じて眠りについた。  再び目が覚めたら、辺り一面が真っ青だった。 「あお子にしようか」 「あお子かぁ。悪くないなぁ」  お願い。もう少し普通の名前がいい。イライラしながら眠りについた。  再び目が覚めたら、辺り一面が真っ黄だった。 「き子にしようか」 「き子かぁ、悪くないなぁ」  本当に考えてる?特に二人目。真剣に考えてる?いいわ、私が決めるから。そうね、色がいいんでしょ?うーん、決めた。みどり子。みどり子なんてどう?可愛いでしょ。次こそはよろしくね。私はくじを引くような気分で眠りについた。 辺り一面が真っ茶。「ちゃ子にしようか」 辺り一面が真っ黒。「くろ子にしようか」 辺り一面が真っ黄土。「おうど子にしようか」  いい加減にして。もう限界よ。次こそ緑色で目覚めるように、頭の中でほうれん草が一本、ほうれん草が二本、と緑の野菜の事だけを数えながら眠りについた。  目が覚めたら、辺り一面が真っ緑だった。これ!そう!みどり子!私は彼らの声を聞くまでもなく、完全にこの世界から出ていく事を決めた。 「おぎゃあ!」  男は生まれたばかりの赤ん坊を、コワレモノのようにそっと抱きかかえた。女はそんな男の姿を見て微笑んだ。 「そんなにオドオドしなくても大丈夫よ」 「なんか壊さないか心配でさ。かわいいな」 「良かったわね、お父さんが抱っこしてるわよー」  赤ん坊はニコリと口元をあげたように見えた。 「寝てる時にね、辺り一面が真っ緑の世界にいたの。それで名前決めたわ」 「何にしたの?」 「ビリジアン。山本ビリジアン」 「ビリジアンかぁ。悪くないなぁ」  赤ん坊の口元が明らかにへの字に曲がった。
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