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春井壮吾は、腐れ縁の友人、久須美刻の一挙一動を、瞬きも惜しい心持ちでじっと見守っていた。
二十畳ほどの室内には、警察関係者数人と、刻の指示で集められた被疑者候補の四人が、固唾を呑み刻を見つめている。
いや、中には恨みのこもった刺すような視線を向けている者もいる。
人間の体から発せられる体温と威圧感で、室内は目に見えない異様な空気で息苦しい。何度も立ち会っているが、壮吾は、この空気に慣れる日は来ないだろうと思う。
毎回、緊張感からの手汗が凄いのだ。
「俺たちの中に犯人がいるっていうのかよ、あんたのような妙な格好の若造の推理なんかあてになるものか! ホームズでも気取っているのかね」
被疑者候補の五十代と思しき男性が、刻を指さし声を張り上げる。言われた本人は端整な顔に余裕の笑みを浮かべた。
「ええ、あなたの仰るとおりです。僕のような若輩者に推理などできません。ただ、天に煌めく星々が、僕に答えを告げ、解決へと導くのです」
……でた。刻の決め台詞だ。
こればかりは一向に慣れないし尻がむず痒くなるのだが、謎が解けたことを示している。
刻は、力仕事などしたこともないような長く綺麗な指をすっと伸ばし、ある人物に真っ直ぐ向けた。
刻の顔から笑みが消え、人形のように整った顔は冷酷なほどに美しい。
無言の圧力に気おされ、激高した男性は声を詰まらせる。
「彼を殺害した犯人は、あなたです」
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