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ある程度の衝撃を受けてもOKな素材のため、不備はなさそうだ。ほっとして装着すると、刻が軽いため息を漏らす。
「外れないように工夫してくれないと困るよ。いいかい、君の平凡な一重瞼の目はメデューサに匹敵するほどの危険な凶器なんだ。それを持っていることを忘れるな。僕は石になるのはごめんだよ」
胸がズキリと痛むが、無視を決め込む。
「はいはい……わかってるよ。――そうだな。じゃあ、紐かゴムでも通すか」
壮吾が提案すると、刻は思案の表情の後、名案が浮かんだ、とでもいうように、左手の手の平に右手の拳をポンと当てる。一転、目が楽しそうだ。
「水泳用のゴーグルはどうだろう。それなら外れないし。あ、スキー用のゴーグルでもいいかな」
「はあ? なんだそれ、マニアックなプレイかよ」
「ついでに水着着用っていうのも一興だね。ブーメラン型はどうだい? 意外に似合うかもしれないよ、春井くん」
「冗談だろ」
雑な言葉をポンポン投げられても、この態度は自分に対してだけなのだと思うと、悪い気はしない。
必要以上ににやけそうになる顔をなんとか保ち、壮吾は床に落ちた下着や衣服を拾い上げる。
ベッドサイドの時計は午後十時を指していた。
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