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北鎌倉の平家の引き戸の玄関から・・・❗️
建長寺を背にして北鎌倉から歩いて数分の閑静な住宅街を!
「こんにちわぁ〜!」
『はぁ〜いぃぃ〜どなたさまでしょうかぁ〜?』
引き戸の硝子に移る影には北鎌倉のやわらかい日差しが硝子戸越しに輝いています。
「東京の山田です」
『あゝハイハイ・・・今開けますネェ』
紀子は玄関の硝子戸の引き戸を引きます。
「イヤ〜御在宅でよかった!」
少し安堵の顔を山田のおじさまは見せて居ます。
『マァマァおじさまぁ〜今、父を呼んで来ますから!」
紀子は玄関から居間に居る父に東京の山田さんご夫妻の来訪を伝えます。
『イヤイヤ〜オオ山田かぁ!」
紀子の父も久々の旧友との再会に声を上げ挙げていました。
「オオ〜田中・・・ご無沙汰で申し訳無い!」
『オヤ・・・奥方も!」父は山田のおじさまご夫妻を見てます。
父は山田のおじさまの奥様にはもう数年ぶりの再会でした。
父の少し驚く顔におじさまがぁ〜!
「そうかぁ〜・・・手紙読んでないか?」
『・・この時期・・・手紙とて・・・配達は出来やせんぞぅ』・・父は山田のおじさまにいいます。
そんな父は少し苦笑いを浮かべました。
「それも、そうだなぁ〜田中!」
山田のおじさまが父の顔を見てこちらも苦笑い!
『マァ・・・ここではなんだから、上がれよ山田』
紀子が見ても疲れている山田ご夫妻。
「アナタ、田中様にコレを」
「オオそうだなぁ〜!
つまらないモンだが・・・!」
奥様がおじさまに折り箱を手渡しました。
『アラ・・・おじさま・・そんなヨソヨソしい』
『マァ〜熊屋の羊羹・・・父の大好物ですのよ、おじさま』・・このご時世に羊羹は父には嬉しいでしょう!
「ハッハハハ、田中は甘党だからなぁ〜」
おじさまは笑って父の顔を見てました。
『しかし、奥方も・・・今時、百姓袴とはなぁ』
そんなお二人を見て父が・・言います。
「しかたが有りませんのよ、田中様、東京じゃ・・・コレが一番良いって!」
奥様も少し恥ずかしそうに・・言っておられました。
「しかし・・・流石に北鎌倉は静かだなぁ!」
『マァ・・・田舎だからなぁ〜!』
「東京を離れて・・・こちらに来ますと・・・ホットしますネェ・・あなた!」
「ほんとにぃそうだなぁ!」
久々の再会も玄関越しでは・・と父が!
『マァ・・・早く上がれよ山田!』
「それじゃ・・・お邪魔しますか!」
山田ご夫妻を居間にお通しをして・・父が私にいいます。
『オオイ〜紀子、寿司八で上寿司を四人前頼んでくれよ!』
「オイオイ、そう気を使わんでくれ田中!」
山田のおじさまも父に言っておられます。
『マァ・・・いいじゃ無いか、お前とも久々だから・・・!』
おじさまご夫妻は恐縮しておられます。
『ハイ・・・おじさま、おばさま・・お茶をどうぞ!』
『オイ、紀子、山田の熊屋の羊羹も出しなさい!』
父も久々の再会にとても嬉しそうです、
『アラ、そうですわね』
『その前に、寿司八に電話するわね、お父さん』
『ところで・・・暫くユックリして行けるんだろぅ?』
父がおじさまご夫妻に聞いていました。
「嗚呼・・・田中さえ良かったら・・・イヤ・・・こちらからお願いするよぅ・・二〜三日ご厄介に!」
『な〜に、俺のところは娘と二人暮らし、ニ〜三日とは言わず、一週間でも、居てくれよ!』
『積もる話も有るし、酒の相手が居らんで少々時間を持て余していたんだから!』
父はとても嬉しそうです。
「アッハハハハ、田中は甘党で、酒好きだったなぁ!」
「アラ、寒櫻ですの?・・・紀子さん?」
『そうですわぁ〜おばさま・・・丁度一昨日から咲始めましたのよ!』
「良いわね〜やはり北鎌倉は温暖な地域ですからね!」
『でも、何も無い田舎ですけどね、ホホホホ!』
縁側から小さな庭には「寒桜」が蕾を膨らませています。
『しかし、良く東京から来れたなぁ〜山田よぉ・・』
「嗚呼・・・電車が止まって居るから、二日も掛かったよ!」
『そんなに・・・か?』
父は東京から二日もかかることに少し驚いてました。
『もうすぐ、寿司が来るから食ったら、今日は熱い風呂に入って寝ろよ、山田!』
「イヤ〜ありがたい、熱い風呂など・・・この一週間入ってはいなかったんだよ!」
『それほどなんですか、おじさまぁ〜?』
「そうだね・・・紀子ちゃん!」
「そうね・・・東京は酷い有様で・・!」
「ここ北鎌倉は東京に比べたら別天地だよ、紀子ちゃん!」
おじさまご夫妻はとてもお疲れのようでした、
(チワ〜マイド、寿司八です)
玄関からいつも威勢の良い寿司八さんの板前さんの声!
『オオ・・・来た来た、山田、この寿司屋は海が近いから・・・美味いゾ!』
「お寿司なんて・・・東京じゃ夢ですから!」
「ホントだなぁ!」
おじさまご夫妻は・・きっと東京の食糧事情に困窮しています。
『サァ〜食って、風呂に入って・・・今日は疲れて居るから寝た寝た!』
『紀子ぉ〜客間に布団を引いておやり!』
「イヤ〜紀子ちゃん布団くらい自分達でやるから良いよ!」
おじさまったらご遠慮をしてましたの。
『何を言ってるか、山田は我が家のお客様だから、なぁ紀子!』
『そうですわぁ、おじさま、おばさま』
「悪いネェ・・・紀子ちゃん!」
「イヤ、田中ホントお世話になります!」
おじさまとおばさまったらご丁寧に畳に頭を垂れます。
『何をあらたまって、お前と俺の仲じゃないか、何も遠慮はいらん、自分の家だと思って気楽に過ごしてくれよ!』
『ソラ、話して居るうちに寿司が、乾いてしまう、食おう、サァ食おう!』
『紀子ぉ〜井戸からビールを出してくれ!』
『ハイ、お父さん』
父はビールを片手におじさまにお酌を・・とても嬉しそうです。
『どれ、マァ一杯!』
「イヤ〜矢張りビールは乾いた喉には・・・いいね!」
「ホント、そうですね・・アナタ」
しばしゆっくりと時が過ぎて行きます。
『オオ・・・そうだ、ラジオの時間だ!』
『紀子ラジオをつけてくれ!』
「放送もネェ?アナタ!」
「ううん・・そうだなぁ!」
『今日はチャント聴こえるかしら?』
ラジオのスイッチを入れます・・真空管が温まるまで少し時間が必要です
『ガ〜ピ〜・・・本日の・・・ガ〜・・ゴメラ・・・ピ〜・・・ゴメラは・・・江東区・・・江戸川区・・・ガ〜ピ〜・・・のスカイ・・・ツリー・・・を破壊しました!』
「しかし・・・なんだなぁ・・・こう毎年、毎年、怪獣ゴメラが東京を襲う様じゃ、東京にはもう・・・住めんじゃろう?』
父はラジオの途切れ途切れの音声に耳を傾けています。
『山田も、東京を引き払って、こっちに来れば良いヨ!』
「しかし、なんで・・・怪獣ゴメラは夏と冬に現れるのかね?」
『そりゃ・・・山田よぉ子供達が・・・楽しみにして居るからなぁ、東京タワーや国会議事堂を怪獣ゴメラが破壊するのをなぁ〜!』
「子供達のストレス発散か?」
『そうだなぁ〜山田ハッハハハ!』
私は思いますきっと詰め込み主義でストレスがたまって・・・居るから・・でしょう!
〜小津映画風・大怪獣ゴメラ〜
終
配役
田中 笠智衆のつもり
紀子 原節子のつもり
山田 山村聰のつもり
奥方 杉村春子のつもり
寿司八 二本柳寛のつもり
アナウンサー 梨乃塚志賀人のつもり
勿論・・・ローアングルを想像してお読み下さい。
☆大友克洋・高千穂遙、故・高寺彰彦氏へのオマージュ作品っす!
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