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パラフィリア
その人に会うと、頭の中が真っ白になるんです。
学校の先輩でした。
私が部活動具を片付けていたときのことです。その日は少し早く終わったので、一年生はボールに空気を入れるように言われました。とは言っても空気入れは一つしかなくて、何人もで使いまわしてもしょうがないので、私が一人でやることにしました。
バスケットボールをはじめたのは、友達に勧められたからです。
小学生のころから人よりも身長が高くて、よく運動部に誘われました。でも運動は得意ではないので、なんだかガッカリされてしまうことが多かったと思います。
「あ、いえ……好きでやっているんです。はい、別に、いじめとかじゃ」
人に頼まれると断れなくて、でも辞めるのも悪いようで。
「い、いえ、そんな、あのう、一年生の仕事ですし、男子は別のボールを……え? でも」
特にやりたいこともないので、私は、流されてしまうことが多かったんです。
「……はい。ありがとうございます。あの、先輩」
自分から男の人に話しかけたりなんて、したこともなくて。
「背、私より高いんですね」
その日、初めて男の人とまともに会話をした気がします。
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