パラフィリア

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 冬が近づいてきます。  イチョウの並木道に黄色い雪が降り積もり、かさかさと踏みしめる中に、実を見つけることもなくなったころ、私はようやく告白の方法を思いつきました。やっぱり少女漫画なんかを参考にして、屋上に来てもらって、二人きりで伝えたいと思いました。  好きです、と、それだけ言えば覚えていてくれるでしょうか。先輩はきっとモテるでしょうから、たくさんの相手の一人くらいにしか思われないと思います。  付き合って欲しいなんて、だいそれているけれど。  ただ、この初恋を、少しだけでも形にしたかったんです。 「失礼します。鍵、お借りします」  体育準備室を最後まで使ったりしていたので、私はよく職員室で鍵をお借りしていました。屋上は立ち入り禁止なのですが、私はこっそり鍵をとって入ってみました。  こんな悪いことは初めてで、どきどきと。  屋上は風が冷たかったけれど、抜けるような空が近くて、この地平に私一人になったような気がして、気持ちが良かったです。周りに大きな建物もないので、四方を覆うフェンス以外は空ばかりの風景は、なんだかロマンチックに思えました。  手紙と言うのも初めて書きました。  先輩の受験勉強のお邪魔になるかなと思っていたのですが、AOでの合格が決まったようでしたので、踏み切ってしまいました。漫画で見た通り、下駄箱に入れたんです。
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