不時着

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 ガリッと嫌な歯応えがあった。  私はペッとその場に口のなかのソフトクリームを吐き出した。 「どうしたの?」  隣にいた彼氏が驚いて目を丸くしている。 「ソフトクリームに石か何かが入ってたみたい」 「ええっ……大丈夫?」 「うん。……歯は欠けていないっぽい」 「そっか。良かった」 「でも、ごめんね。デートの真っ最中に」  私が女子力低いと言われるゆえんはこの辺りかもしれない。 「いいよ、びっくりしたんだもんね。もう一つ、買う?」  なんて懐の広い人だろう。 「んーん、まだ残ってるから平気」 「そっか。気を付けて食べてね」 「うん」  ソフトクリームに石なんてそうそう入っててたまるもんか。  次になんか入ってたら、店に苦情入れてやるんだから。  それにしても、私はなんて幸せなんだろう。  天気も良いし、彼氏も良い人だし。  ソフトクリームには悪かったけれど、今日これ以上嫌な事が起こらないと良いな。  私は青空とお日様にそう願った。
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