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おとうさん1
西暦二千八十年。機械の街と化した世界、そんな世の中での寂しい一つの家庭の夜。
今夜は祝福される誕生日、たぶん誰もが家族と祝う記念の日。
お父さんがいてお母さんがいて子供がいる、家族団らんの場。
でも、僕の十一歳の誕生日にはお父さんがいない、お母さんもいない。
僕と誕生日ケーキをテーブルに一緒に座っているのは家族じゃない。
ただのロボットだ。
ロボットと対面しながら僕は黙々とケーキを食べていた。
周りにはローストチキン、コーンポタージュ、ガーリックトースト、色鮮やかなサラダ、すべてこのロボットが作った。
僕はコイツを家政夫ロボットとしか思っていないけど、コイツは自分を僕の亡くなったお父さんだと勘違いしている。
本当にイライラさせる家政夫だ。機械のくせして人間みたいな顔つきのコイツはニコニコと気持ちの悪い笑顔で僕を見つめている。
そんなロボットの視線を受けながら僕は無言で『お母さんが買ってきたケーキ』だけを食べていた。
コイツが作る食事なんて食べたくなかった。
「リッスン、テクノロジー」
僕がそういうと家のスピーカーから機械音声で「ドウサレマシタカ」と反響した。
「音楽。明るいやつお願い」
そう言うと、スピーカーからポップなとても陽気な音楽が流れてきた。正直、コイツとの無言に耐え切れなかった。
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