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土下座よりも屈辱的なこととは何だろうと思ったが、答えなど聞くつもりはなかった。答えを恐れて屈服したなどと思われるのも癪だ。
「──で、美紘サンが聞きたいのはそれ? 僕と疋田伶士の関係?」
意外にも質問を蒸し返してきたので少々面喰らったが、椎野は表情を崩さず「そうだ」と頷いた。
「関係ねえ。うーん……」
もったいぶるように[エディ]が目を宙へと向ける。
「ネットのなかじゃ、疋田伶士はカリスマっぽく扱われてたけど、彼は僕と似てるかな」
その表現に引っ掛かりを感じた。些細な事ではあるが、疋田伶士は自分と似ている──自分が似ているのではなく、疋田伶士のほうが自分に似ていると、あくまで「自分」が主体となっている。
「直接会ったことはないけどさ」
「会ったこともないのになぜ似てると思うんだ」
「ネットは仮想現実とかっていう人もいるけど、僕の考えは逆なんだよね。ネットのなかの自分こそが本当の自分だと思うんだ」
「つまり、疋田伶士とはネット上だけで繋がってたってことか」
頷く代わりに[エディ]はにんまりと笑みを浮かべた。
この、作ったような笑顔。確かに疋田伶士と似ている。眠剤を使って催眠術をかけたのは、果たしてどちらの[エディ]なのか。
「そういうことだから。僕と疋田伶士は、互いに本心で語り合ってた」
「警察は無能だと?」
「アハハッ!」
弾かれたように[エディ]が甲高い笑い声を上げた。その突如とした表情の変化に、椎野は冷たいものが背筋を這い上がる感覚を覚えた。
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