星 火 燎 原

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「なんか騒がしいと思ったら……お姉さん、こんなところで何やってるんです」 「何って、警察署にごはん食べにきたとでも思う? トイレ貸してくださぁいって、ここコンビニちゃうやろ」 「聞き方を間違えました。今日はどういったご用件で?」 「そうそう、それやん。なあ?」  いきなり同意を求められた制服警官が、そっと目線を外す。その事については「お姉さん」はまったく気にも留めず、声をひそめることなく語を継ぐ。 「なんやこないだから不審なメールが次々送られてきてなあ。うちもうノイローゼになりそうやわあ」  なにぶん「お姉さん」の声はキンキンとよく通る。プライバシーもへったくれもない。 「お姉さん、とりあえず生活安全課へ──」 「ほれみい!」  途端に、何故か勝ち誇ったように「お姉さん」が笑顔で胸を張った。 「やっぱりこれ生活安全課が担当の案件やんな? 生活の安全を守る課やもんなあ、うち間違うてへんよな?」 「間違ってません、間違ってませんから」  久我に腕を取られ、引きずられるようにエスカレーターに向かう様は、さながら連行される被疑者のようだ。しゃべり続ける「お姉さん」の甲高い声とともに、長い長いエスカレーターに乗って二人が4階へと姿を消すと、ようやく1階ロビーの呪縛が解けて、あとには二人の関係を訝しむ声がさざ波のように押し寄せた。  4階フロアにある生活安全課の明るいカウンターを通りすぎ、トイレの手前のドアを開ける。中を覗いた「お姉さん」が目をまるくして立ち止まった。 「なにここ? 倉庫?」
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