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画面をスクロールしていくと、怪しげな文面の下に怪しげなURLが添付されており、ここにアクセスするようにと指示している。典型的、否、古典的なメールによる詐欺だ。ここ港那伽警察署では、生活安全対策第4係が担当している。
「これ以外にも、似たようなメールが?」
久我の問いに、嘉納はさも迷惑そうに顔を歪めた。
「2週間くらい前からやねえ。1日2、3通くらい変なメールが届いてん。現金1億円が当たりましたぁーとか、500万もろてぇーとか」
「このようなメールには絶対返信しないでください。URLを開くのはもっての外です」
「大丈夫、スルーしとる」
「場合によっては、配信停止や登録解除などと称してURLを開かせようとするものもありますが、それも絶対に触ってはいけませんよ」
「う、うん、わかった……」
「迷惑メール対策はしてますか?」
「うん?」
「携帯会社が提供してるサービスです。迷惑メール対策をきちんと設定しておくことで、怪しいメールを自動で拒否してくれます」
ほう、と感心したように、綺麗に弧を描いた眉が上がった。
「それと」
久我に代わって明智が嘉納の方へ、ずいと身を乗り出した。
「よくわかんない会社のサイトには、簡単にメールアドレスを登録しないほうがいいよ。アドレス収集者に回収されて、あなたのアドレスがいろんなところに流出しちゃうからね。自分のブログとかSNSアカウントでアドレスを公開するのももちろんダメ」
ぽかんとして聞いていた嘉納だが、ややあってぐにゃりと笑みを浮かべた。
「梨果ちゃん、あんたえらい賢いなあ! そや、いいモンあげる」
再び紫色のバッグに手を突っ込む。そこから取り出したものを手のひらに乗せ、満面の笑みで明智に差し出した。
「はい、飴ちゃん」
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