金 剛 不 壊

15/39
前へ
/170ページ
次へ
***  贅を尽くした一流ホテルのスイートルームは、リビングも寝室も、外壁のほとんどがガラス張りになっていて、東京の夜景を一望できた。65階という高層に位置しているので、眼下に宝石をぶちまけたように見える。 「さてと。じゃあ、脱いでくれる?」  部屋に入るなり開口一番、[エディ]が当然のように言い放った。ソファを前にして突っ立っていた椎野が思いきり顔を顰める。 「あ、脱ぐのは嫌? だったら触るけど?」 「……言われたとおり、財布しか持ってきてないんだが」 「確認させてよ」  薄い笑いを浮かべた[エディ]が近付いてくる。脱ぐのは嫌なので、仕方なく両腕を体幹から少し離した。  ぽんぽんと服の上から体をなぞられていく。ジャケットの内ポケットに入れておいた財布を抜き取られ、テーブルに放り出された。 「携帯も持ってないね?」  ポケットを確かめる為なのだろうが、尻を撫でまわされる。つい舌打ちしてしまった。だが[エディ]は気に留める様子もなく、大腿から足首まで片脚ずつ入念にチェックする。 「ホントに財布だけかあ。意外と素直なんだね」 「わざわざここに呼び出した目的は何だ?」 「まあ、そんなに慌てないで。夜は長いんだからさ」  [エディ]はオフホワイトのソファにどさりと腰をおろすと、ウェルカムドリンクのオレンジジュースをグラスに並々と注いだ。 「ほら、いま開けたばっかりのジュースだよ。変なモン入ってないから」  椎野のほうへ、ひとつグラスを滑らせる。 「あの[エディ]には変な薬盛られちゃったんだよね。あいつ、変態だもんね。安心してよ、僕はそういうの好きじゃないから」
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

373人が本棚に入れています
本棚に追加