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「……ね、シュガー」
「シュ……?」
「シュガー。きみの名前。今、わたしが命名したの。
きみ、やわらかいし、あまくて良いにおいがするから」
「……あいかわらず、あまいものが好きなんですね」
「うん。
……ね、天使の仕事、大変かもしれないけれど、わたしもまた、頑張るから。
絶対、頑張るから。
……だから。ずっと、わたしの事、憶えていてね」
少しずつ失われていく『わたし』を、少しでも、誰かに憶えていてほしくて。
頭の中が真っ白になるその瞬間まで、あたたかいものを、肌で感じていたくて。
わたしは両腕に、力をこめた。
「――忘れません。……ずっと」
いつの間にか、『わたしの部屋』は、ずいぶんと小さくなっていた。
壁も、天井も。頑張れば届きそうなくらいの位置にある。
――たくさんの『わたし』たちが、消えてしまった。
「…………」
けれど。……でも、もう、こわくない。
だってきっと、『わたし』はずっと、『わたし』のままだから。
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