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物語編
【新薬の効果検証です。謝礼は三十万円になります。なお投薬後に健康を害する問題が発生したら無料で治療いたします】
ワタク氏は窓のない部屋で一人目を覚ました。コンクリート打ちっぱなしの壁で殺風景な部屋。中央にダンボール箱が一つ置いてあるだけで、他には何もない。
確かにワタク氏は新薬の臨床試験とは聞いていたが、こんな話は聞いていないと明らかに不満げな表情を浮かべている。ワタク氏がダンボール箱に近づくと、ダンボールの上に紙が置かれていた。
これを解けば、バイト終了です。頑張って下さい。
目が覚めたら、白だった。
鼻が覚めたら、□だった。
口が覚めたら、△だった。
耳が覚めたら、○だった。
△○いこといい□
ワタク氏は書かれている文言に目を通し、諦め気味に首を振った。こんな脱出ゲームまがいの事をやるなんて思っていなかったという顔だ。ワタク氏はそもそも謎解きは得意な方ではなかった。むしろ読書が大好きな文系だ。ワタク氏はとりあえずダンボールを開けて中身を確認した。ガラスが2枚とアルミホイル、そしてガムテープのみが入っていた。ワタク氏は皆目見当がつかないようで、それらを眺めながら、腕を組んで考え始めた。
そして一時間ほど経過した。ワタク氏は出来る限りの知恵を絞って色々考えたが、何も正解らしきものにはたどり着いていなかった。
突然、天井から一枚の紙がヒラリヒラリとワタク氏の前に落ちてきた。そこにはこう書かれていた。
出れないと一生帰れないよ。ご両親にも許可を頂いたから。
ワタク氏は落ちてきた紙を見て信じられないという表情で目を白白させた。そしてその瞬間、ワタク氏の脳内に何かが閃いたようで、ダンボール箱の中からガラスとアルミホイルを取り出し、何かを作り始めた。そして試行錯誤しながら"ある物"を完成させた。そして"ある物"を見て、考えた。
そして、意を決してワタク氏は叫んだ。
「昔ある所に、喋るお手玉がおってだなー」
壁の一部がギイっと開き、研究者達が入ってきた。ワタク氏はその研究者達に詰め寄った。
「これ、元に戻るんですよね?」
「いいえ」
「ちゃんと治療するって書いてあったんですけど」
「健康は害してないですよね」
そしてワタク氏は右手にバイト料を握らされてそのまま施設から追い出された。そのワタク氏の表情からは、不満があるのか素の表情なのかは読み取れなかった。
(了)
#なおワタク氏が気づいた答えは次のページへ
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