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4_お祓いできないってなぜですか!?
「ッキー?アッキー?」
肩を揺すられる感触を感じながら瞼を少しづつ開けると、最初に目に入ってきたのは拳、って危ねぇ!!
ブォン!!!!!
体が硬直したおかげで顔の横を掠めるので済みましたが、反射的に避けたら当たってました…。
「あ、起きた~。やっぱりアッキーはこういう起こし方が効果的だよね~。」
ミスったら起きれなくなるんですが、当人は全く悪びれる様子もなく私を起こした実績を誇っています。
ここの関係者であるミコさんは相変わらずね~という顔をしてお茶を淹れている。さすが同級生は静音さんの暴力を日常の一コマにしていますね。
「アッキーってさっきまでの事どこまで覚えてる?」
お茶を飲みながら聞いてくるミコに儀式開始までしかないと伝える。想像通りだったようで特に落胆したような顔もせずに次の言葉を伝えてくる。
「結論から言うけれど、やっぱりアッキーには憑いてた。そして私たちの結論は祓う気がないという事。」
理由は畑中霞というのが俺に憑いている少女の名前だったからだ。俺たちとよく遊んだ高校のクラスメイトだった人物だ。
元旦の朝に見た時にもなんとなく面影があるなと思っていたし。……ホントダヨ?
「[オシズ]と呼ばれた事からもしかしてと思ってた~。私をそう呼ぶのは霞だけだったから~。」
そう言えば普通は[シズ]って呼ばれていたな。
「霞は19歳で亡くなったと言っていた。死んだ理由は言わなかったから言いたくない事があったんでしょう。気が付いたら神社の境内にいたらしい。
自分の一番楽しい記憶だったのが高校最後に皆で行った初詣だったと言っていた。だからこそ引き寄せられたのでしょう。」
8年という歳月が経ってから現れたのは、恨み以外の理由で実体化する霊の場合は期間がかかる事が多いらしい。
「本題なんだけど~、なんとか霞を生かす事ができないかと考えているの~。」
静音が話に割り込んで本題を話し始める。このまま俺の体に憑いているとそのうち霞が俺の体を乗っ取る事になってしまうらしい。霞の意思は関係なく霊体である幽霊の意識が浸透してしまって幽霊がその体の主になってしまうとはミコの言葉だ。
霞としては俺の体を乗っ取るくらいなら除霊を希望しているらしい。俺も二人と同様に霞に生きて欲しいのでなんとかならないかと思う。
「霊を定着させるには、本人の思いが強く一緒にいたいと思う物や人。他には本人が自分と錯覚するくらいの生き写しの人形とかかな。当然だけど生き物は無しよ?」
ミコからのレクチャーを受けて考える。そんなものがあるのか…。
もうすぐ13時になるけど、父親に事情を説明してこちらを手伝ってくれるらしい。こういう時に昔からの付き合いが強い人物は頼りになる!
唸ってもまとまらないので、紙にブレインストーミングの要領で書き出していく。
いっその事、霞にもう一回俺と交代してもらって思いつく物言ってもらった早いんじゃないかと思ったので聞いてみた。
「……交代させるとその分霞がその体に定着してくるし、アッキーの存在消えてく割合大きくなるけど?」
うん、速攻でその案は断念した!高校の友人の為といってもさすがにちょっと…。
「アッキー、これって何か思い当たらない~?」
静音が書きだした項目の一つに○をつける。その文字を見て少し考えると一人の人物が思い当たった。
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