食堂への来訪者

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「で、今日は何にするんだ?明日花」 「明日花ちゃんスペシャルで」 「……太るぞ」 パーン!!  明日花の隠し持っていた張りせんが俺の頬をビンタする。痛い……だが、明日花ちゃんスペシャルは1合のご飯の上に肉の薔薇と呼ばれる、牛肉を何層にも重ねて薔薇を表現するという明日花専用のメニューであり、確実にカロリーを摂取する禁断のメニューだ。幼なじみとしては嫁入りしていない世間的には可愛い幼なじみを止めるのが筋だろう。 「いいの!普段から重い酒入りのケースを運んでる私にはカロリーが必要なの!」 「でも確実に太るぞ!落としにくい箇所に肉が付くぞ!」 「大丈夫だもん!私には全身の筋肉を鍛えられるダイエット機器が揃ってるから付いても落とせるもん!」  なぜ分からないんだ!?俺は明日花の為に言ってやっているのに……別にさっきの料理の美味さについての報復ではないからな。 「で、そのダイエット機器で今まで肉を落とした事があるんだろうな?」 「……大丈夫、私身体に肉が付きにくい体質だから」 「代謝って年齢が経つにつれて落ちていくらしいからな。そろそろ危ないんじゃない?その体質」  別に何の報復のつもりもない。ただの押し付けがましい幼なじみのうざったい善意だ。 「大丈夫な物は大丈夫なの!おじちゃん、明日花ちゃんスペシャルお願いね!」 「はいよ!明日花ちゃんスペシャルすぐ作るからね!」  真の意味でカロリーという枷から逃れた明日花は強かった。おそらく俺と同じ30に近付きつつある明日花も、そろそろ体質という魔法が解ける頃合だろう。明日辺り、体重計に乗って100g増えてる事を気にする姿が目に浮かぶ。そん時はダイエットメニューでも作ってやるか。何だかんだ常連さんだしな。
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