食堂への来訪者

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「勇太、語梨ちゃんのこと憶えてるよね?」 「憶えてるも何も葬式の時に会ったけど、どうかしたのか?」  明日花はさっきとは違って神妙な表情でこちらを見つめる。どうやら何か冗談を言う訳じゃないようだな。俺の中に沸き上がっていた怒りがどこかへ消え、明日花の話を聞くことにした。 「いやね、さっき酒を運んでた時に語梨ちゃんの家を窓から覗いたら、語梨ちゃんが寝込んでたの」 「風邪かな?和樹が入院してから今まで、和樹の為に病院とバイト先を行き来してからな……その疲れが今になって出てきたのかな」 「行ってあげないの?語梨ちゃんのところ」  仕事をしている最中なのに、何言ってるんだこいつは。でも、いまほっとけばお前も安心してあの世に行けないよな……和樹。 「親父、悪いが今から亡くなった親友の嫁さんのところに出前届けに行ってくる」 「ああ、行ってこい。店なら俺一人で何とかなるからその親友の代わりに付き添ってやれ」 「ああ、ありがとな親父」  俺は着けていたエプロンを外し、壁に掛けてあるバイクの鍵を取り店の外に出た。
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