お前家の君

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 キッチンで料理を始めてから大体20分が過ぎた頃、料理が無事完成した。  さて、机に置いてラップしておくか。今は冬だし、冷蔵庫に置いとかなくても1日ぐらいは持つだろう。  出来上がった料理が入った皿を机へ持っていこうと振り返る。振り返るとそこには今にも倒れそうな語梨ちゃんが立っていた。 「語梨ちゃん、まだ寝てなきゃ駄目だよ。語梨ちゃんは疲れてるんだから」  俺は皿を机に置き、語梨ちゃんが倒れないように背中から腕を通して反対側の肩を掴む。 「ごめんね、語梨ちゃん。肩なんて掴んだりして。今すぐ部屋に戻ろうね」 「大丈夫ですよ……和樹さん。私、和樹さんとこうしていられて幸せですから……」  俺はその一言に絶句する。俺は何を勘違いしてたんだ。語梨ちゃんは和樹の死と向かい合っていても受けとめきれてないんだ。  語梨ちゃんが目を覚ましたのも、俺の包丁の音を和樹が料理していると勘違いしたから……もしかしたら語梨ちゃんの心の奥底にはまだ和樹が生きていると思いたがっているのかもしれない……俺と同じで。  
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