ひとりの旅人の訪問

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ひとりの旅人の訪問

 ある日、ぼくらの仲間のひとりがやっているペンションに、ひとりの旅行客が泊まりに来た。  この旅人は、他の観光客とは明らかに様子が違っていた。はじめはその異邦人も、観光地化したキョア・シラスの絶壁やイルミネーションを回っていたみたいだけれど、そのうち、ぼくら地元民でも訪れないようなキョア・シラスの奥までやってくるようになった。五日間以上このキョア・シラスに滞在するものは研究者も含めてほとんどいなかったから、ぼくは気になってその女性に声をかけてみた。すると意外にも、彼女の口からはぼくらの話す言語が、カタコトながら吐き出されていた。  ココモ、キョア・シラス、ナノ?  ぼくはその質問にぼくらの言語で受け答えしてみたが、どうやらその女性は、ぼくらの言語の全部を理解していないようなので、ぼくは英語でその女性に改めて返してみた。 Yes, here is also the field of Quoa • shiras. (うん、ここもキョアシラスの一部だよ。)
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