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 目が覚めたら、白だった。視界が、ではないようだ。頭の中が白いのだ。 (何も、何も、分からない。) 記憶が真っ白というのは大分やばい状況なのではないだろうか。 そう思いながらそう思えるということは、そう考えられるということは、完全に真っ白では無いような気がする。世に言う記憶喪失なのかもしれない。 そうであるなら自分のいる場所は病院である可能性が高いだろう。そう思いながら瞼を開く。 しかし、目を開いたはずなのにそこは真っ白だ。病院の天井……というわけでもないようで、あたりを見渡しても全てが白いのだ。壁というわけでもなく、空間が白いようだ。 そもそもこれは空間ではないのかもしれない。 影も無いし、そもそも光がないのに黒以外の色を認識できていることが可笑しい気がする。 (ああ、そうか。記憶は無くなったのではなく、無かったのかもしれない。) 自分という存在は今ここに、誕生したのかもしれない。 知識があるのは、成長したら覚えていないだけで、本当はこういうものなのかもしれない。
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