寝台列車の中で

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寝台列車の中で

寢台列車に乗って私は北へ向かっている。 いつもより少し早く目覚めた私は窓際に身を寄せて外の景色を眺めていた。 まだ夜明け前の空は藍色に塗られ、地平線の彼方は白郡色に光ってる。 ガタン、ガタンとその身を揺らしながら走る寢台列車は睡魔となって私を襲って來る。 東京で暮らし始めてから4年、やっと住み慣れた街は私が思い描いていた物とは違かった。沢山の人で溢れ返る街は様々な人の人間関係が絡み合い、常に周りの人間に気を配る毎日は田舎で育った私にはそれが異常に思えて辛かった。 そんなある時、私は友人と北海道へ旅行する事になった。 北海道の永遠にも思える様に広がる平野は私の心を飲み込む様に広がり、心の疲れた私には雄大な北海道の自然がまるで自分を包み込む様に感じ、癒された。 そんな事がきっかけで私は度々連休が來ると寢台列車に乗って小さな旅に出かける様になった。 ...目が覚めた。どうやら私はまた眠ってしまったらしい。首の痛くなった顔を上げて外を見ると、既に太陽は半分程地平線から顔を出していた。 起きる前は土の見えていた大地も今は辺り一面白銀色で染まっている。 空の天辺は紺色に塗られ、太陽に照らされた空は夜と混じり合い花淺蔥色に染まっていた。 景色はどんどん変わっていき、列車は住宅街を通り過ぎていく。 窓には水滴が熟した果実のように紅玉色の太陽を反射させ、窓にいくつもの房を実らせていた。 朝焼けに照らされた白銀の世界の中をガタン、ガタンと音を鳴らし、寢台列車は奔っている。
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