スノウドロップ=レインドロップ

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「あっちゃん! 私雪だるま作ってみたい!」  校庭の前で踏み出せずにいるとキョーコちゃんがスキップでもするかのように軽やかなステップでグラウンドに続く小さな階段を降りて行った。そのつま先が柔らかそうな雪に触れるか触れないかの瞬間。  私もうずうずが止まらなくってキョーコちゃんを追い抜いてどすっと校庭に着地した。スニーカーの下にはかすかな柔らかい、土以外の感触。これが雪。  一番最初に私が踏んづけてやった、雪! 足をつけてしまえばあとはもう何も感じなかった。校庭の中心まで駆け出した。ちょっとだけ土よりも足を取られそうになったけれど、それでも必死に走った。  キョーコちゃんが慌てて私の元に駆け寄って私の名前を呼ぶ。あっちゃん。  息を切らして走ってきたキョーコちゃんの後ろには私みたいに恐る恐る雪に足を踏み入れる者、無邪気に転げ回る者、ぞくぞくと昇降口から人が流れてくる。低学年から高学年まで。私よりもお姉さんの人も手袋をわざわざはめて雪玉をせっせと作っている。普段はやんちゃな乱暴者も今日は無邪気にみんなとはしゃぎ回っている。  教室の窓からのぞき込んでいるみんなもぞろぞろと校庭に吸い込まれていくように移動を始めている。授業を始めようとしていた先生は面食らっているようだったけれど、やれやれと肩をすくめるだけで怒りはしなかった。  ずらりと並んだ教室が校庭から見えるわけだけれど、どの窓の中の先生も大体同じ反応だ。あきれて授業中止と黒板に書くか、それかしげしげと窓の外を眺めているか。やっぱり雪を見るのは先生も初めてみたいだった。
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