スノウドロップ=レインドロップ

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「ねえ、きつね!」 「え? きつねなんて、居るわけないよ?」  小さな雪玉をころころと転がしているとぱっとキョーコちゃんがばしばしと私の肩をたたく。パーの手の形で目一杯たたいてくるのはキョーコちゃんが興奮しているとき。  きつね、なんて聞こえた気がする。まさかまさかこんなところできつね? 森なんて近所にないし、そんなに自然豊かな土地ではない。野生動物が出るなんて話は聞いたこともないから、野良猫と見間違えたのだろう。そうにきまってる。私は雪だるまを作るのに忙しかった。  キョーコちゃんを無視しようとしたけれど、あまりにも叩く手に力がこもっているから無視しようにもできなかった。キョーコちゃんの指さす方を見ない限り叩かれ続けると思って、その方向を見ると、確かに図鑑で見たことあるようなキツネが、すぐそこでちょこんといた。黄色ではなく、真っ白だ。  いわゆるユキギツネだろうか? 本の中でしか見たことのない、ふわふわの動物がきょとんとした顔でこちらを見つめている。私が小さく、きつね、ともらしたらキツネは慌ててどこかへ走り去ってしまった。学校の外へすたこら逃げる。そのまま雪だるまを作り続けていればよかった。けれど、どうしても追いかけたい衝動を我慢できなかった。
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