スノウドロップ=レインドロップ

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「帰ろう、キョーコちゃん」  キョーコちゃんの冷たい手を両手でさすってくるりと向きを変えた。キョーコちゃんは酷い顔をしていた。私の袖でキョーコちゃんの鼻水を拭ってやるとキョーコちゃんは恥ずかしそうに俯いた。私も何となく笑い返して一歩、踏み出した。 『やあやあお嬢さん方。ワガハイの声が聞こえるかね』  くぐもった男の人の声が聞こえてきた。前方から。  私とキョーコちゃんは、怪訝な顔。どこから聞こえてきたのか分からなかったからだ。だって、男の人は、というか人間は私とキョーコちゃん以外誰も居ないのだから。  あるとしたら、いつの間にかいた雪だるま。立派な雪だるまだ。青いバケツを頭に乗せて、両手に見立てられている木の枝には毛糸の手袋がきれいにかぶせられている。首を捻っているとまた声が聞こえてきた。 『おやおや、もしかして聞こえていないのかね? うーん困った困った』
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