第二の白

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第二の白

 初めての失敗のあと、私は自分の生活習慣を見直した。しかし結局、仕事柄規則正しい生活を送ることなどできず、睡眠環境は改善されなかった。代わりに私は睡眠以外で疲れを癒す方向へ舵をとった。  具体的には健康グッズを揃えることに奔走していた。マッサージャーはもちろん、ホットアイマスクやサプリメントと幅広く試してみた。  なかでも私のお気に入りは入浴剤で、疲れが一挙に吹き飛んだ。入浴剤ごときでと思うかもしれないが、人によっては何がきっかけになるかわからない。私は入浴が最適解だと気付いたのだ。それから休日は温泉に出かけることが多くなった。  そうした習慣が身について半年後、私はある旅館で羽を伸ばしていた。  ガイドブックにはお湯が特徴的で快適とあり、興味をそそられたのだった。 さっそく例の温泉に入ると、全身から疲れが洗い流されるようだった。ちょうどいい湯加減、ほどよい香り、今まで入った温泉のなかで最上であることは間違いなかった。  リピーターになろうなどと考えながら黙想した。大半の人が温泉の心地よさに理解を示してくれることと思う。嫌なことなどどうでもよくなり、むしろいい思い出に浸れる。私は温泉に浸かるようになってから悪夢を見なくなっていた。それどころか気分のいい夢を見る。  そういえば先日、あの編集長がクビになった。散々私をいびってくれたのでいい気味だ。私に悪夢を見るほどのトラウマを植え付けてくれて……。彼がリストラを宣告されたときの顔を思い出した。  思い出す……? 「ガボッ」  目が覚めると視界は白かった。  肺が水で満たされる。むせてもがくが、足が宙に浮いている。何が起こったかわからないまま意識が薄れていき、映像は白から黒へと変わった。  白いお湯で有名な温泉に入っていただけなのに……。  
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