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「お母さん、塾、追加したいんだけど」
夕食後、私は自分を虐めにかかった。
「は? ダメダメ、いくらかかると思ってるの、勉強ならお姉ちゃんに教えてもらいなさい」
「えー?」
母の一言で、遅い夕飯を食べる姉が顔を歪める。まるで厄介者を相手にしているかのようだった。
「あなた教師なんでしょ、妹の勉強くらい教えてあげなさいよ」
私の姉は高校の数学教師だった、こんなにも近い場所に家庭教師がいながら、私はそのチャンスを活かせないでいた。
「えー? そもそも望、なんで急に勉強に力いれるのよ」
「勝欄に入りたいから」
家族が一斉に笑った、それは教室で笑う男子達と同じに聞こえた。
喉の先まで上ってきた怒りの言葉を飲み込んで、自分の部屋に逃げた。
自分でも分かっている、でもここで桜田君と離れてしまうと、もう二度と会えなくなるに違いない。
そのためにはどうしても勝欄に入らなくてはいけないのだ。
「男、だろ?」
姉が部屋のドアを少し開き覗きこんできた、
「ちょっっと、おねえちゃん」
「図星か、そんな中学生の恋愛なんかおままごとみたいなものでしょ?」
「ち、違うもん」
「違わないって、望は望の行ける範囲で受験すればいいのよ」
もう一声浴びせたかったが、売り言葉に買い言葉になりそうだったので、私が先に話題を変える。
誰も協力してくれない、こうなれば自分でなんとかするしかない、明日、帰りに参考書と問題集を買おう。私の受験大作戦の始まりだ。
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